
一昨年の秋、街用事が入り久しぶり一番町近くの芭蕉の辻前を通りかかると、銀行の青い看板が目印、いつも当たり前に佇んでいたビルがロープに阻まれ立ち入り禁止となっていました。
「あれ?七十七銀行も閉まってる…もしや…解体?」そのビルは、1959年<昭和34年>に竣工された【新仙台ビルディング】。仙台で一番古い歴史を持っていたビルでした。<新仙台だけど(笑)>
ビジネスビルの走りとなっておりました当時のそのビルの一角、子供の頃に父が務めていた会社も入っておりました。会社のあったフロアはたしか5階辺りだったかと。お休みの日曜だけど会社の用事が入った時、父はよく私もいっしょその場所に連れていってくれました。
フロアに着いたら仙台の街が一望出来る東側の窓辺へ一目散。「遠くまで見える!すご~い!」5階といえどもまださえぎる建物が少ない時代、屋上が遊園地だった藤崎デパート、建ったばかりのホテル付き電力ビル、その向こうには遠く仙台駅までも見渡すことが出来る抜群の風景でした。
階下には全体黒く金色の丸い模様フェンスに覆われた魔訶不思議な建物が…。子供心にとっても気になる佇まい。厳重警備の<日本銀行>仙台支店だったことが後ほど分かりなるほど納得。大人になった今でもしっかり記憶のカメラに残っているということは、その時の窓辺の風景がとてもお気に入りだったのでしょう。
その新仙台ビルディングの上階には、現在上杉にある仙台の迎賓館【勝山館】の前身【仙台精養軒】というレストランが店を構えていたこともあり、披露宴会場でも使われる方が多く私もそこで挙式された友人の披露宴に出席したことがありました。レトロながらも風格のある素敵なフロアが美味しいお料理とともに今も懐かしく思い出されます。
変わり往く仙台の街を長年静かに見守り続けてきました【新仙台ビルディング】。懐かしい思い出がたくさん詰まっていたこのビルの取り壊しを知ったのは、残念ながら解体決定後の立ち入り禁止となってからでした。ああ、時すでに遅し…。転居した父の会社のフロアには行けないまでも、せめて昭和のあじわい残る1階のエントランスで、アンモナイト入り大理石の壁に手を添えながらゆっくりお別れしたかった…。仕方ないので、脳内記憶の中で手を添えて…ありがとう そして…さようなら…。古い建物好きの私にとって、またひとつ大事な宝物を無くしたような…ほんとうに寂しいかぎりです。
昨年多忙で立ち寄りそびれておりましたその場所に今年1月久しぶりに通りかかると、建替えの新しいビルの外壁工事がほとんど出来上がっておりました。竣工予定は今年の10月とのこと。思い出深く馴染んだ景色が変わってしまう寂しさも多々ありますが、ここは江戸時代の仙台の中心<芭蕉の辻>通り。これからも活気溢れる様々な人々が集い、素敵な未来のストーリーがたくさん刻まれていきますように…。
Miho.K<2020.2.13>
*他掲載フォトもどうぞごいっしょご覧ください。

①江戸時代仙臺商業の中心地。仙台城に続く<大手筋>と江戸に繋がる<奥州街道>の交差点【芭蕉の辻】。一昨年の秋、街用事で久しぶり【芭蕉の辻】のある国分町通りを歩いていたら…あれ、七十七銀行の青い看板が見当たらない。

②この古い6階建てのビルの名前は【新仙台ビルディング】。「もしや…解体…?」

③昭和34年竣工の築59年。当時の仙台では画期的な初のビジネスビルでした。正面に掲げられていた【新仙台ビルディング】ビル名看板。昭和時代の温かさを感じるこの手書き筆文字のロゴ看板も近い時期に取り壊されるのでしょう。寂しいな…でも仕方ない…。せめてブログの中にこの懐かしい文字を残しておくことにしました。

④その年の秋、再び通りかかってみると…

⑤ビルは解体準備中。全面足場が組まれフェンス等で覆われておりました。新旧変わり往き過ぎるのは、狭い日本の都市のやるせない宿命。大きな震災を二つ越えながら頑張ってきた【新仙台ビルディング】。ああ、ついに写真と心の思い出の中だけになってしまった…名残惜しみつつ敬意を表し…心の中で静かに拍手。

⑥昨年は私事多忙でなかなか街中伺えず。やっとのことひと段落で、今年1月下旬、久しぶりに一番町方面へ。広瀬通は快晴の青い空。

⑦アーケードに行くには芭蕉の辻が近道。「そういえば、新仙台ビルディングの建替えはどうなったかな?」差し掛かってびっくり!いつの間にか外観ベース工事がかなり進んでおりました。

⑧1階工事現場。内側覆いと外側覆いの間に設置されていたプランタ温室スペース。無機質な現場に癒しのグリーン。色とりどりの花たちが行きかう通りの人々の目を楽しませておりました。

⑨交差点を渡り振り返り見ると、1階現場フェンスの壁中央に光り輝く長方形。あれはいったいなんだろう。

⑩渡った信号戻ってみたら…なんとフェンスに埋め込まれたデジタルのインフォメーションでした。工事現場用を見るのは初めて。時間経過とともに次々とインフォメーションビジュアルが変化していきます。これは工事の経過フォト。

⑪これは関係者以外立ち入り禁止のインフォメーション。わかりやすいピクトグラムを使いながら赤黒白の配色でまとめたシンプルモダンデザイン。

⑫場面変わって今現在の日時インフォメーション。温度&湿度までもがカラフルにデジタル表示。

⑬工事現場でよく見かける定番の工事人頭下げバージョンもデジタル表示。

⑭これも新旧ビルの見比べ経過フォト。⑩の後半続きかな。

⑮鬼とお多福の組み合わせが楽しい節分バージョン。これは~2/3節分までの限定インフォ。ちょっとレア?

⑯一番町アーケードはもうすぐ。お茶屋さんに併設されている懐かしい佇まいの<たばこ屋さん>。映画【三丁目の夕日】の一場面のごとし。

⑰停めていた自転車が倒れてしまうぐらい風の強い日。先の交差点は、仙台駅に続く中央通りと市役所に続く一番町アーケード。右角は仙台を代表する老舗デパートの<フジサキ>。

⑱デパート入口1階のお花屋さん店頭に、今が旬の<クリスマスローズ>。なぜか名前に合わずクリスマスを越えた新年頃が最盛期。ちょっとハニカミうつむき加減が愛おしい。

⑲冬至間もない1月は16時台なのにアーケードから覗く空はすでに真っ暗。グリーンラインのページェントが映える中、買い物も終了そろそろ家路。

⑳変わり往く世間の流れ、最近とみに速さを増して来たような…。人々の変化、デジタル大変革の吹き荒れる嵐に付いていってるような、付いていけてないような…‘‘‘‘はたまた付いていっていいものなのか、否なのか…これ自身までもが悩やましく…。
すべてのことに関して、残していくこと、変化させていくことの見極めがとても難しい時代。しかしながら数ある世界遺産がそうであるように、愛すべき価値あるものは、出来うる限り丁寧に、後世に残していくことの作業はとても大事。一度失ってしまった大切な形は、神様でももう元の形に戻すことが出来ません。
様々なことが揺らぐ時代ではありますが、自身の活動は、足元根っこをしっかり張って変わらず延長線上の今のスタイル継続で。決めた自分を信じながら、次の新たな一歩を丁寧に前に進めていこうと思う、2020の新年1月でした。
風邪、インフル、不明のウイルスも騒がれている上、花粉までもが始まってしまう戦々恐々の不安な季節、栄養つけて免疫アップ*皆様方もお体どうぞお大事にされてお過ごしくださいね。
Miho K.<2020.2>